カイトボーディング安全講習会

危険予測

スポーツは大なり小なり危険がつきものです。しかし何が危険かを知ることで危険を回避することも出来ます。常に万が一のことを考え危険を予測し、対策を考えて行きましょう。

カイトの上げ下ろし

ランチング、ランディングのサポートをお願いする時は自分の信頼のおける人にお願いする。

お願いされた人は責任を持ってサポートする。もし自信が無かったら無理せず断る。

サポーターはラインの絡みやカイトの不具合、さらにはまわり安全性を確認しなくてはならない。 

注 ライダーは早く海に出たいと焦っている時などは、安全確認が疎かになりがちです。そのときサポーターのライン取り付けミス指摘で危険を免れたライダーは沢山います。サポーターはライダーや周りの人の安全をサポートする重要な役目でもあります。

ラウンチング

ラインの取付、絡みの確認は、充分すぎるほど行う。

エッジオブウィンドウまでカイトを持ってきて揚げる。

 直ぐに出たいと焦っている時や慣れてくるとパワーゾーンに近いところから一気に揚げてしまう人もいます。カイトに伝わる風の強弱を感じながらゆっくりあげる。

エッジオブウィンドウでも引きずられる時や周りに人や危険物があったり、またラインの絡みやカイトに異常を感じたらライダーが揚げるサインを出してもカイトを放さないで下さい。

風速に対してカイトサイズが分からない時や不安を感じたときは無理して上げようとせず必ず経験者に聞く事。

強風時やガスティーな時は極力ライダーの後ろを掴んでもらうサポートをつける。

風下に人や危険物がある場合は絶対に揚げない。

ニュートラルまで上げるときは風のコンディションを確認しながらゆっくりと上げる。

フロントラインを若干短くセットしアンフックして上げるのがより安全。

 大丈夫だと思っても一気に揚げるのは非常に危険

少し揚げただけで引きずられ続けたり風の強弱が激しいと感じた時はニュートラルまで揚げずに直ぐ降ろす。

セルフラウンチングはなるべく避けサポートしてもらうこと。

状況にもよりますがなるべく海側にカイトを持ってきて上げましょう。

ランディング

カイトを降ろす側に人や危険物が無い事を確認する。

カイトをキャッチしてもらったらハーネスラインやチキンループをフックから直ぐに外してカイトの方に近づく。(ラインのテンションを緩める)

 カイトをキャッチしてもらったライダーは安心してしまいがちですが意外と多いのはキャッチしたサポーターが手をすべらしカイトが吹っ飛び、それにつられハーネスラインやチキンループが外れぬままライダーが吹っ飛んでしまう事故です。

キャッチする人は必ず風上側で待機し降りてきたカイトのリーディングエッジをしっかりキャッチしたらライダーの方に近づきラインのテンションを緩める

 カイトを目前でキャッチしようとした時ブローが入り自分の頭上すれすれを風上に越えた瞬間自分が風下から風上のカイトをキャッチしてしまいがちだがそれは大変危険な行為。風下から掴んだ瞬間、そのカイトが凄いパワーで自分にふりかかってきて最悪ラインに絡まれ引きずられる恐れがあります。万が一それを免れても手放したカイトはパワーゾーンに転がり一気にパワーが入ると同時にバーを持っているライダーが危険な目に会います。ライダーはそのときハーネスを掛けずに手で持っているだけならバーを放せば危険なことはありませんが、もしハーネスラインやチキンループを掛けていたらカイトと一緒に吹っ飛ばされてしまい大事故に繋がりかねません。

強風時のセルフランチングはバーを放してリーシュを利かせ回収する事をオススメします。よくチキンループを掛けたままコントロールしてカイトを地面にたたき伏せようとしている人を見かけますが強風時は最も危険で成功率もかなり低いのでやめましょう。

 強風時にコントロールしてセルフでカイトを地面に伏せようとしてもカイトは地面についた瞬間バウンドし、また空中に揚がります。例え伏せられたとしてもカイトにたどり着く前に舞い上がる可能性が高く非常に危険です。

カイトを放置しておく時は必ずリーディングエッジの中央を風上に向け、飛ばされぬよう充分な重しを載せる。たとえ微風であっても風向きが変われば裏風を受けたカイトは舞い上がり、強風になればカイトは吹っ飛んでしまう可能性があるので見えない所に長時間放置しておく事は止めましょう。

天気予報

前線通過時はいきなりの突風に見舞われ通過したあとは風向きが逆になる事があります。

カイトサイズはあらかじめその日の天気を予測し回りの状況を把握して慎重に選びましょう。また、雨雲が近づいている時は様子を見ましょう。雷が鳴ったときはカイトはやめましょう。

 カイトに雷は落ちやすく、上げているだけでも電気が直ぐに帯びます。その状態で空中に飛ぶと電気の逃げ場がなくなり着地した瞬間、バチツと感電するので地面から足を離さず直ぐに下ろしてください。

コンディション

カイトボーディングにとって無くてはならないものが風。目に見えない風を読むのは本当に難しく知識や経験が必要とされます。

風速、風向きは瞬時に変わっています。風を多く体感している経験豊富な人はそのときの風速に最適なカイトサイズを選ぶ事が出来ます。が、時には予測できないほどの風の変化によって危険にさらされる事も有り得ることを頭に入れておきましょう。

風向き

オンショア 海から吹く風によって潰された波が押し寄せます。風上に走る事の出来ないビギナーが波打ち際で行うとカイトと波のパワーで直ぐに浜に打ち上げられてしまう事が多く危険です。

オフショア 陸から海に吹く風は山や建物などを吹き抜けてくるので風の強弱が激しくカイトを揚げる事すらままならない状態で大変危険です。

たとえ安定した綺麗な風が吹くポイントでも海上で道具のトラブルや怪我をしてしまったら風上のビーチに泳いで帰ってくる事は至難の業。そのまま沖合に流されつづけます。オンショアだったら沖で何かあっても風下のビーチへ流され戻ってくることでしょう。

オフショアでのカイトボーディングはやめましょう。

サイドショア 海岸線と平行に吹く風は環境にもよりますが、ビギナーのスタート練習には良い風向きです。が、沖に向かって走るようになるので気付くと足の届かぬ所でトラブルが発生してしまうとそのまま岸と平行に流され続けてしまいます。何かあった時のことを考え足の届くところやトラブル時でも泳いで帰って来れる範囲で乗ることをオススメします。

クロスオンショア 海から岸に向かって斜めに吹く風はトータル的に最も安全な風向きではないでしょうか。沖で何かあっても風下の陸方面に流され戻ってくる可能性が高く、風上に走る事の出来ないビギナーでも下りながら走っても岸と平行に走るような風向きになります。しかし、沖から戻ってくる時は浜に乗り上げないよう注意が必要です。

クロスオフショア 岸から海に向かって斜めに吹く風はオフショアと一緒で大変危険です。

ガスティー 風の強弱が激しい風の時にカイトを頭上に揚げ続けることは大変危険です。カイトは風の強弱によって位置を変えます。強い時は風を逃がすエッジオブウィンドウへ、弱い時は風をはらますパワーゾーンへと。パワーゾーンで弱い風を受けているカイトにいきなり強い風が吹き込んでしまったら一気に人は飛ばされてしまいます。そのときのカイトの位置がニュートラル付近であれば上空に、横方向であれば横に飛ばされることでしょう。上空に飛ばされたら大変危険ですので強弱の激しいコンディション時は必ずカイトは横方向に下げてください。そうする事で上空に飛ばされることは免れます。横方向では地面に足がついているので踏ん張る事が出来ます。

風速の強弱が激しい時は安定するまで待機しましょう。

海には多くの危険があります。波、カレントにさらわれたり、毒をもった生物が襲ってくる可能性もあります。遊んでいるうちに体の体温が奪われ体力衰退、それにより足がつることも良く聞きます。さらに風に当たっているだけでも体力は奪われているのです。

沖でカイトを落としリランチ不能となった場合でも自力で戻れる範囲で楽しみましょう。また泳がなくても風下に流された場合、たどり着くビーチが安全であることを頭に入れ、その範囲で楽しみましょう。

海に入る前はお酒は飲まないようにしましょう。

 ビギナーにとってはくせものではあるものの、上達するに連れ波を利用して楽しめるようになります。 

 カイトボーディングで恐いのはラインと一緒に波に巻かれる事です。カイトに引っ張られる方向と同方向で波に巻かれてしまうとラインのテンションが緩みカイトが墜落しラインと一緒に波に巻かれる可能性もあります。そうなる前にカイトのパワーと波の速度を頭に入れておく事が大事です。それでも波に追い付かれそうな時はニュートラルや逆方向にカイトを動かすことで避けられる事もあります。

もしテンションが緩み波に巻かれてしまったら直ぐにバーを手放してください。

最悪事に備えラインカッターの携帯をオススメしています。

そして、波と一緒にボードが頭上に襲い掛かってくることもあります。ヘルメット、インパクトベストなどの装着は、あなたの身を守る重要な役目を果たします。

干潮、満潮、カレント

場所によっては潮の満ち引きによって危険なコンディションになるところもあります。

潮が引くことで岩などの危険物が出てきたり、浅すぎて飛ばされた時に海底にたたきつけられるなど。

満潮時は浜辺が狭くなったり富津の北海面は、沖に歩けなくなる。

気付くとカレント(潮の流れ)に乗って流されている事があります。海上に出るときは建物など出廷した場所の目印を決めておきましょう。

潮の流れに逆らって泳いでも体力がなくなるだけです。沖出しのカレントに乗ってしまったら、流れに逆らわずに横に泳ぎ流れから出る方法もあります。潮の流れはまた陸に向かって戻ってくることもあります。わからなければ地元ローカルに良く聞き流れを確認してから入りましょう。浜辺に赤旗が立っているところは要注意です。

カイトの回収

陸上でリーシュを効かしバーを放し墜落したカイトを回収する時は、リーシュ延長上のラインをカイトまでたぐっていきます。そのとき自分は必ずどのラインよりも風上にいなくてはいけません。

注 たぐっているラインや他のラインの風下にいてカイトが舞い上がったらそれらのラインは自分にふりかかって来ます。最悪、体に巻きつき引きずられる事になるかもしれません。よく、落ちたカイトまでリーシュもバーも手放して走ってとりにいく人を見かけますが大変危険ですので必ずリーシュラインをたぐって回収してください。 

 全て手放しカイトをとりにいっている間にカイトが舞い上がり飛ばされそれに引っ張られて後ろから飛んできたバーが腕にあたり骨折した人もいます。さらにそのカイトはとどまる事を知らず飛びつづけ他の人に襲いかかる可能性もあるので充分注意して下さい。

リーシュを付けたまま他人に揚がっているカイトのバーを貸し、借りた人がハーネスを掛けてしまう事があります。これは最も危険なケースです。

注 となりの人にリーシュが繋がっていて自分がハーネスを掛けている状態でカイトが左右に振れてしまったらリーシュ側は常に引っ張られてしまうので思うように操作が出来ぬまま引きずられハーネスをとってバーを放さない限り操作不能のカイトに2人同時に引きずられます。リーシュを付けている人とハーネスを掛けている人の距離からしてもカイトはスパイラルすることが多く永遠と引きずられる最も危険な状態です。

セルフレスキュー

海上でトラブルにあった場合、一人で対処しなければならない場合もあります。

的確に身の安全を確保できるように、次のことを頭に入れておきましょう。

沖でカイトが墜落し、リランチ不能となった場合。

まず、いち早く安全な浜辺にたどり着くには、どの方法が適しているか?

ラインを巻き取りカイトを直に掴んで浮き輪代わりにして泳いで帰ってくる。

ラインを巻き取りカイトの両端を掴み風を入れながら帰る。(慣れないと難しい)

ラインは巻き取らずにそのままバー掴んだままカイトに引っ張って浅瀬までたどり着く。(風下に安全な浜がある場合)

波がある所では、カイトが波に巻かれると凄い勢いで自分も引っ張られます。

それとは別に自分自身が波にまかれた時はラインと一緒にまかれる可能性がありますので危険を感じたらリーシュをリリースすることも必要です。

状況は様々なのでどれかが当てはまる正しい回答と言い切れませんが、自分のおかれた状況を冷静に判断できるよう、海に出る時は危険予測を頭に入れておくことが大切です。

道具のメンテナンス

どんなに上手い選手でも道具が壊れてしまったら危険にさらされてしまいます。クイックリリースは作動するかラインは痛んでいないか、日頃からチャックしてみよう。

注)砂がかんでいたり、塩で固まっていてリリースが出来ないこともあります。また、ラインやシーティングベルトが毛羽立っていたら、早めの交換をお勧めします。

特にカイトとラインの繋ぎ目などは負担が掛かるのでよくチェックしましょう。

環境

電柱や電線、危険物ゴミ(ガラスの破片やとがった物)、コンクリートや鉄柵、飛行場

テトラポット、岩、防波堤、漁船

一般の磯遊び、漁師、他のマリンスポーツ

これらの危険物が無いことを十分確認し、他人に危害を加えることは絶対に避けてください。

自分では充分な距離をとっていたとしても、ちょっとの操作ミスで遠くにある危険物に引きずられ直ぐに近づいてしまう事もあります。状況によりけりですが最低でも100m風下に何も無い事を確認しましょう。

マリンスポーツの中では新参者のカイトボーディング。カイトゲレンデとしてビーチを定着させるためには、地元の漁師、住民、サーファーの方々と上手く付き合っていくことが必須であり、迷惑掛けずに行うことで役場などの公共団体に使用する旨の届出もきちんと受け入れてくれます。このようにカイトゲレンデが誕生するまでには、大変な労力があったことを考えていただき、新しいゲレンデへ行く時は地元の人に敬意を払う気持ちを忘れずに行きましょう。

注)例えば、昔から生活するために海を利用している漁業権を持った漁師に『ここでカイトをするな』と一言いわれればそこのゲレンデは使えなくなってしまい、今までの苦労が台無しになってしまいます。

何年経っても、安全で楽しいカイトボーディングライフを送れるよう、みなさんでより良い環境を築いていきましょう。

リアルカイト 金子大介

2004/10/30